お知らせ

2019年1月

相原農場ホームページがリニューアルいたしました。

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相原農場が取材を受けて以下のホームページに掲載されました。

横浜とれたて野菜「消費者からみた有機農業のわかりにくいところ」
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第16回 農・未来塾報告

ルロン・石原 ペネロープさん*

2016年10月23日(日) 相原農場に出会ってから2年、相原成行さんに有機お兄さんになって頂いてから1年、ようやく相原農場で17年前から行われている「農・未来塾」に参加できました☆

参加者がほぼ50名にも及び、午後の1時半~4時の間に相原伸光さん、成行さん、浅井まり子さん、そして農園たそりやの南雲宇晴さんが紹介した今度の講師、やさいだ農園の矢定雄平さんのお話を聞かせて頂きました。
下記、私のフランス人の目で見たことや心で感じたことの記録を書かせて頂きます。

* 塾長挨拶・発起人代表挨拶:  相原伸光さん & 浅井まり子さん

2016農未来塾

相原お父さん(相原伸光さん)は、昨年の12月から今年の3月まで胃の具合が悪く大変 辛かったお母さん(相原佐江子さん)の病気について話し、薬を飲まずに相原農場の青汁だけ治ったということで、有機農業や安全な食の大事さを聞かせてくだ さいました。また、周りの人のことに気をつけたり、相手が元気であるか、問題がないかを聞いてたり、問題があったらどのようにして手伝えるかを聞いたりし て、昔のようにお互いに助け合う関係の大事さについても話してくださいました。

そして、1970年に藤沢の食生活研究会を作った浅井まり子さんも、自分の健康と娘さ んのアトピーを治した安全食の大事さを語り、生産者と消費者が一緒になって同じ道を歩く重要さを主張してくださいました。また、食生活研究会と相原農場の 出会いについても話し、生産者同士と消費者同士の仲間づくりもとても大事なことだとおっしゃいました。

2016農未来塾

「今、全国に仲間がたくさんおります (・・・) 自分一人だと思っても、この道は素晴らしいです。みんな関わっている人たちに共通していることは沢山あって、私も娘もそうやって元気になってきたわけでから、この仲間を増やすということの大切さも、ぜひ皆さまのお力を貸してもらいたい。私たち自身が元気になることは、その輪づくりだと思っております」

「有機農業の道は簡単ではないですが、実に楽しい道です」

*「藤沢、宮崎での取り組みと見えてきたもの」矢定雄平さん(やさいだ農園代表)

1- 有機農業との出会い

2016農未来塾

矢定さんは、相原農場で2009年末より研修を受け、2010年に藤沢で有機農業で就農しました。そのきっかけは、32歳に長女が生まれ、色々と食べ物の大事さや次の世代について考えるようになったそうです。

「その子に何を食べさせていくのかということを考えたんですよね (・・・) 当たり前なんですけど、人間が食べたことが体になっていくわけで・・・そういうことは32歳に気付いたというか、子供に気づかされた」と。また、「それと 同時に、未来というものも考えて、次の世代ができたなと思って、適当に生きていかなきゃというか、これからの世の中のことを考えながら生きていかなきゃな と、本当に感じさせられました」と、矢定さんがおっしゃいました。

矢定さんは長女が生まれる前に全く食べ物に興味がなかったそうですが、日本の有機農業 運動の先駆者消費者が自分の子どもが心配になって有機農業に関わったと同じように、今の有機農業にも子供が生まれたきっかけで有機農業に関わり、矢定さん のように子供や次の世代を守りたいと思うようになった方が多いでしょう。また、昔は特に主婦の方が有機農業運動に取り組み、有機農業の消費者( =有機農業を広めた大事な生活者) になっていましたが、今は共働きの夫婦が多く、家族や子どものことをとても大事にしている男性の方も多く、それにサラリーマンの現状も有機農業運動の発生背景にあった高度成長期と全く変ってきて辛くなっていますので、有機農業に興味を持っている方に消費者だけではなく脱サラして生産者になっていく方も増えているでしょう。

畑のない藤沢のところで育った矢定さんは、初めて相原農場に行った時に自然の豊かさに魅了され、新しい藤沢の文化にも出会えたそうです。「畑に行って、土を触って、野菜が育てることを見て、本当に素晴らしいことだなと思って、、、それと同時に、食の本当の大事さを感じて、自分に一番大事な人間に良いものをたべさせようと思ったら、それは作ることだけじゃなくて、自分の生活の全てに関わっていくものだなと、食べるものはぜんぶ自分の生活を変えていくものだなと思いました」。

また、研修を卒業した時に何も知らず、野菜の名前も覚えずに就農したと、有機農業に興味を持っているが就農を迷っている方々を応援しました。

「僕がこの研修で一番学んだことというか (・・・)卒業した時も大した技術がなくて、成行さんも心配していたと思うんですけど、僕が一番ここで(相原農場で)見たのは、相原農場の、、、ここの部分、、、すみません、言葉にならないですけど、ここの部分ですね・・・」と、胸に手を当てながら「ここの部分がしっかり入ったから、今もなんとかやっていけてると思うんですよね」と矢定さんがおっしゃっていました。

農業を特別な農法か技術ではなく、心で感じるものだと。

ここはあれば、なんとかやっていけるんじゃないかなと、今も思っています」。

そして、「今、周りのおじいさん農家さんから、お前は本当に農家になったなと言ってもらえるような農家になってきたかなって、自分でも感じています」

2- 宮崎県への移住

しかし就農して1年もたっていない2011年3月、福島第一原子力発電所事故が発生しました。
矢定さんと奥さんが子供のことがとても心配になり、宮崎へ移住することにしました。

そこで、みんなが生産者で、誰もの野菜を売ったり買ったりすることも考えないほど野菜に溢れる環境では、矢定さんがそれまで知識がなかった養鶏を野菜づくりの代わりに始めることにしました。野菜づくりを続け県外で売る選択もありましたが、 そうすると鮮度が低くなりますし、何しろあまり良いことではないと思ったそうです。そのため生活ができるように養鶏と卵の販売をメインにし、野菜づくりは 畑6反で大豆、麦と大根の少々の野菜で加工食品を作ることにしました。

- お豆腐は天然にがりや国産大豆にこだわっている大豆屋さんに百パーセントやさいだ農園の大豆で作ってもらい、矢定さんが自分で販売するオリジナルお豆腐だそうです。

- 小麦粉はうどん、きしめん、そしてやさいだ農園の小麦粉と卵を一緒に使った奥さんの手作りシフォンケーキにもなります。

- 押し大豆は「一回大豆を湿して、潰して、もう一回乾燥させる」という加工を受けた大豆ですので、それを一晩水に浸ける必要なく、少しだけ水に戻したらすぐに使えるという、とても便利な大豆の加工食品です。

3- 養鶏や卵のこと

2016農未来塾

矢定さんは現在350羽鶏も飼い、養鶏のことを農・未来塾の参加者の皆さんに熱心に語ったり説明したりしていました。素人として始めたとおっしゃっていますが、相原農場の元研修生が半分以上に及ぶ参加者の皆さんが矢定さんのお話を聞いて感嘆したほど、とても上手に養鶏を営んでいます。

鶏の品種は純国産のゴトウもみじと、ボリスブラウンです。矢定さんによれば、ボリスブラウンの方が飼いやすいそうです。「本当に日本人と西洋人の違うみたいな感じ、ゴトウはすごい繊細ですね。何か違うことがあると反応してしまう。ボリスブラウンはあまり細かいことに気にしないで、楽ですよ 」

また、養鶏を初めて安全な畜産が非常に少ないことに気が付いたとおしゃっています。
皆が良い肉、良い卵を食べたいと思っていても、実は畜産による情報が少なく、一般の畜産が薬などをたくさん使っているという現実を強調しました。また、国産餌をあげる所も少ないそうです。

矢定さんにとっての良い卵は、色も硬さも関係なく、全ては鶏が食べているものだとおしゃっています。「本当にいい卵を食べたいと思ったら、生産者を知らないと食べれない」と。

生産者が鶏に食べさせる物が全て卵に入るので、餌を通して卵の色や硬さをコントロールすることができるそうです。しかし、その卵の黄身がとても綺麗な黄色になっていても、鶏が食べた物が安全な物だということにはなりません。本当に生産者を知らないと、鶏が何を食べているのか、その鶏の卵に何が入っているのか、つまりその卵を食べる消費者が何を食べてるのかがとても分かりにくいです。それも、生産者と消費者がお互いに知り合い、お互いに信頼し合う関係を築く重要さの証ではないかと思いました。

やさいだ農園の薬、防腐剤、抗生剤などを一切使わず、鶏に「人が食べられるものしかあげない」とおしゃっている矢定さんの卵は、喜んでいる人がとても多いそうです。作っている卵は全部売れて、その部分で生活が成り立っているとおしゃっています。また、普通の卵でアレルギーが出る子供たちも多いですが、やさいだ農園の卵を食べたらアレルギーが出ないそうです。

4- 農業との関わり方

質問の時に農業がうまくいかないと悩んでいて農法について質問した参加者の方には、矢定さんが正直に農法についてあまり考えていないことを答えました。

「あんまり深く考えてないです。あまり考えると落ち込んじゃうんじゃないですか」

あまりにも気にせず、とにかく考えすぎを防ぎ、全てをポジティブに考えるということも、矢定さんのとても良いところだと思いました。

宮崎へ移住した時も計画を立てずに移住し、宮崎に住み始めてから考え始めたそうです。

養鶏についても、「普通に育てれば、普通に育つ」、「ちゃんと動かして、ちゃんとした餌を与えて、、、」、「自分で何を食べたいってやっぱり鳥によっても違うんですよね。だから、自分で食べたいものを食べていける環境を作ってれば、鶏がちゃんとコントロールして、自分の体に必要な物を食べていく」と説明しました。「自然にすれば問題がない」とおっしゃいました。

また、畑についても「のびのびと畑はできる」とおしゃっています。

作業日記も書けないであまり考えなくても、あまり失敗したことはないと。

つまり、知らないことを予想し、ある目的を達するために行動することではなく、自然に出来上がった物を正解として扱うという、自然にとても近い考え方です。「全てをコントロールしてそれは正解だ !っていう物はないじゃないですか。だから、出来た物は正解だよ!っていう感じでやって行ったらいいんじゃないですか」 と、矢定さんが自分の考え方と農業への関わり方を要約しました。

それこそ有機農業にぴったりな考え方だと思い、下記の一樂照雄先生の言葉を思い出させました :

「有機農業においては、自然の循環が基本であり、その法則に沿って自然の行動を手助けするにすぎない、という考え方に立つ。だから、有機農業の技術は厳密に自然を観測することによって開発されるのです」(一樂照雄 、「日本農業転換への道-有機農業の提唱」in『地上』1975年5月号)

また、このように無理をせず楽しく有機農業に関わるということは、有機農業の新しい世代の方のとても良いところだと思いました。「それで気持ちが救われてるというか、楽しくできているので、それは一つの継続する手段かな」と、矢定さんがおしゃっていました。

5- 販売のことと、有機で前に進む勇気

2016農未来塾

相原成行さんが矢定さんのお話を聞きながら、研修中の色々なことを思い出したそうです。でも、一番印象的だったのは、矢定さんと一緒に稲刈りをした時だとおしゃいました。「草がすごかったですけど、手でガンガン進んじゃうんですね。周りを見ずに、とにかく自分の刈るスペースをガンガン、ガンガン進んでいて、自分よりも早かったんですよ」。そして、そういった矢定さんの姿勢をラガーマンと比べ、「ラグビーって、大事なものを前には出せないですよね。その大事なものをただツーンに出すんじゃなくて、自分で守りながら、また相手から避けて次の人に託しながら、それでも前、前に進んでいるっていう姿勢が、矢定さんの農業に対する姿勢と、すごくぴったり合っているなという風に、今日の話を聞いて改めて感じました」。「いろんなことにチャレンジしているし、いろんなことに興味を持っているんだけども、本当に心を大事にしながら打ち当たってるから、、、先ほどコミュニケーション能力だと言ってたけど、結局それも矢定さんのここなんです、きっと」と、成行さんも胸に手を当てながらおしゃっていました。

矢定さんは気が強く相原さんに怒らわれたこともあるそうですが、それは私のフランス人の目で見ますと、とても良いことです。その性格だからこそ矢定さんに沢山のことができると感じました。 今のふじさわやさいを作る仲間たちという素晴らしい有機生産者のグループと、そのグループの生産者が支え合いながら野菜を売っている直売所も、矢定さんの「前々進んでいく」という性格のおかげで作られたと言えます。

「とにかく農業で食べていきたいと思って、、、成行さんとお願いして直売所を作りました。最初は野菜づくりもできないし、野菜の名前も覚えてない状態でいきなり野菜直売所を作って、本当に皆さんに迷惑を掛けて、成行さんにもしょちゅ怒らわれてたりとかしながら、やっていたんですけども、、、でも、今は皆さんのおかげですごい広がって、すごい良い直売所になっている」と。

また、最初から子供たちに良いものを食べさせたいという思いで就農し、作った物を保育園の給食に使ってもらいたいと思っていた矢定さんは、たくさんの保育園へ直接行き、自分の卵を紹介しました。「保育園の入り口でガチャガチャやって、鍵が閉まっていたらウロウロして、なんですかって言われて、あぁ、直接話し合いたいですけどと言って 、、、どんどんそれを繰り返すわけですね。でも、半年ぐらいそうやってたら、3件の保育園と幼稚園が給食で使ってくれるようになりました」

そして、その紹介でまた3件の保育園・幼稚園も入り、今は6件で卵を売っているそうです。

「すごい嬉しいですよね。そこにいる子供たちは皆うちの卵を食べているわけですよ。その充実感って本当にすごい 」、「本当に嬉しいです。その喜びが力になる」と、本当に幸せな声でおしゃっていました。

また、その保育園がやさいだ農園の卵をとても喜んでいて、野菜もぜったい欲しがっているとおっしゃいました、他の生産者に同じように直接保育園へ行くことを勧めていました。

「ドンドン行ってほしいなと思います。昼過ぎの子供たちが寝ているぐらいの時間に行くと、先生がちょっとゆっくりしてるので、その時に行くと話を聞いてくれます」

でも、断れることも多いので、はっきりと相手に自分のことを紹介し、はっきりと話すことも勧めています。「そしたら相手もはっきりと言ってくれるから (・・・) ちょっと興味があれば聞いてくれる」とおしゃっていました。

そのように「何でもやってみるといいな」とおしゃっている矢定さんのお話を聞きながら、私もやはり自信を持ち、人間関係の力を信じ、そして自分の考えることや、やりたいこと守れば、とても良いことができるなと思いました。

6- ビジネス化せずに

また、私が矢定さんのお話で一番魅了されたのは、子どもや大事な人に良いものを食べさせたいということ、皆が食べれるように卵を高く売りたくないということ、そして周りの人との関係を大事にしているということ、つまり人間関係を大事にする有機農業の話です。

やさいだ農園の卵を1個50円の値段を維持するために、矢定さんができるだけ自分の作物と、無料でもらえるうどん屋さんの出汁ガラや精米所の米ぬかなどを使ったり、色々工夫したりして安全でありながら値段が高くならないようにしています。「すごい安い」と言われることもあり、「大丈夫かな」と心配している人もいるそうです。でも、矢定さんが「自分が食べてほしい人」が食べれるように、必ず安い値段で売るようにしています。

私の研究を通しては、子育てにお金がかかるということで、有機農業の理念を諦め有機農業で稼げるようにビジネス化へ転換した生産者にも会いました。私は子供のためなら何も言えないと思いながら、実は悲しくて別の方法がないかなと思っていました。

ですから、矢定さんのお話を聞いたら、とても希望をもらいました。矢定さんは子ども3人のお父さんで (来年の3月に4人名目が生まれるそうです !) それでも有機農業をビジネス化にせず、自分の家族と同時に有機農業の理念も守っているということと、「最低の生活」ができることで十分だと思い、大事な人が安全な物が食べれるように安い値段を守っているということは、とても素晴らしいと思いました。

7- 宮崎での有機農業 : 有機と慣行と関係なく一緒に農地を守ること

最後に、矢定さんが宮崎での農業についても教えてくださいました。

矢定さんによれば、宮崎での有機農業がとてもやりやすいそうです。「全てが大きいので、みんな手が回ってないですよね。慣行農家さんも草が多く、慣行農家さんも有機農業なのかと思うぐらい草を出しています」と。また、一回となりの慣行農家さんに草を出したことを謝れたこともあるそうです。

それは、慣行農家さんがより厳しい藤沢との大きい違いだそうです。
「藤沢でやっていた時は、慣行農家さんがすごく怖かったんですよね。草なんか言われちゃうんじゃないかなとか、薬かけようと言われちゃうんじゃないかなと・・・」と心配していたそうです。でも、「今、宮崎だと慣行農家さんの知り合いが9割ですね、農家さんの知り合いで。みんなが有機をどう思っているかっていうと、特別なものだと思ってないですよね。それで生活できるなら、やればいいじゃん、というか。隣に草を出しても、虫を出しても、別にそんなに言ってこない」と。

そして、藤沢で慣行農家さんが怖かった矢定さんは、結局「でも藤沢に、少し話してみたら草に気にしない慣行農家もいるでしょう」と、皆さんに慣行農家さんと付き合うことを応援しました。

「もしどこか土地を耕すところがあったら、そのとなりの農家さんをとにかく味方につけるような行動して、、休んでるおじいさん、おばあさんがいたら自分もお菓子を持って『ちょっと一緒に休んでいいですか』と言って、話をしてみたりとか、、、そういうことをすると、ドンドン、、、有機とか、慣行とか、関係なく農家としての付き合いがドンドン増えていって、そうすることによって、自分も楽になると思うんですよ。良い話も来るかもしれないし (・・・) ドンドン話を掛けていくといいかなと思います」

「今、親戚でもないですけど、かってに機械を使って、最後ご飯ご馳走になって帰ってくるような農家が2、3件あるんです。(・・・) 慣行農家さんだから有機の感覚が分からないっていうと、皆わかってるんですよね 、実は。ずっとやっている人たちは、それがいい物だって分かっているんですよね。ただ、生活のためにできないっていうだけで、、、だから、お前がそれでできるならそれは本当にいいことだなって、皆に言ってくれる」

私が数日前にインタービューした他の相原農場元研修の方と同じように、矢定さんが慣行農業を批判しないで、むしろ慣行農業と有機農業の助け合いにも信頼をしているようです。

宮崎で集落で地域の農地を守るという考え方が強く、それは耕すことだけではなく、「例えば水道が壊れたら皆で集まって直したり、木が倒れたら皆で頑張って起こしたり、、、とにかく皆が集まり、どうしたらいいかを考え、しょっちゅう話し合いして、土地を守っていくという考え方がとても強い」とおっしゃっていました。

そのように慣行農業と有機農業の違いを超え、皆で一緒に農地を守るということは、とても素晴らしい友愛のイメージだと思いました。実は、それこそ「有機」という言葉の意味ではないかと思います。

また、何となくフランスと日本の文化を見て良く感じたことですが、持続可能な支え合いと友愛の関係を築き、皆が一緒に問題を改善のきっけかに変えることができることに、話し合いがとても重要なことだと、改めて感じました。

矢定さんは、「農家っていうのは、耕すだけじゃないです。土地を耕せば、農地を守るわけじゃないだと思うんですよ。その土地をどうやって守っていくか、どうやってよくしていくかを皆で話し合いながら耕していく、それが農家じゃないのかなと、思ってます」とおっしゃいました。

そして、そう言いながら農業は地域によって変わりますし、農業への関わり方や、農家という言葉の扱い方なども、それぞれの場所によって違う物だとおしゃっていました。農業もスタイルが色々あり、農家100人いれば100人通りの農業があるとおっしっていました。

それも、一樂先生の考え方に近い言葉だと思いました。

全ては各人のそれぞれの性格、教育、今まで体験してきた事や、生まれた所や住んでいる所によって、またその所の歴史、文化、気候、風土などによって違うものでしょう。

下記の一樂先生の言葉は農業についてですが、農業以外のことでも、例えば世界観、生活観、社会学などでも扱えるのではないかと思います。

「農業に在っては、一つの処方箋さえあればいつどこで誰が適用しても同じ結果が得られるというものではない。だから農業のやり方は、農民各自が自ら試験的に実践しその積み重ねによって、一つ一つの農地について、比較的に適合してやり方を発見し定着させるより他に良い方法はない」(一樂照雄、 「有機農業とは何か 」、『有機農業の提唱』、有機農業運動資料 No.1, 2008年、2月)

私の結論

今までの研究を通して見た有機農業の新しい世代の方と同じように、矢定さんも家族のことをとても大事にしています。有機農業を頑張って、有機農業を広めたいと思っていても、自分の家族を犠牲しないようにとても気を付けています。そういったことと、あまり考えすぎないで楽しく農業に関わっていくことも、それはずっと有機農業が続けることにとても大事なことだと思います。

「 とにかく生活をメインにしたくて、もともとは子供のためにっていう話だったので 、、、農業って忙しいイメージがあるんじゃないですか。忙しいですよね、実際に。でも、絶対うちは週末は働かないです。子供の遊びの時は子供と一緒に遊ぶ、という基本にして、、、作業ができないよ !と言っても、もうあきらめる。そういう生活にしています」

このように無理をしないように気をつけて、楽しく有機農業に関わること、慣行農業も判断せずに慣行農家さんとも支えながら農地を守っていくこと、そして人間関係を大事にして友愛な社会を作っているということは、有機農業の新しい世代の一番素晴らしいところだと思います。

時間が経って手段と目的を混同してきた有機農業運動や、1990年の有機農業のビジネス化を悩んでいた一樂先生が、今の有機農業を見たらきっと安心するでしょう。とても明るい未来を描く有機農業です。

* 懇親会

2016農未来塾

とても興味深いお話を聞かせて頂いた後、相原佐江子さん、相原農場の現在研修生や食生活研究会の方の作った、とても美味しいお料理がたくさん来ました。

皆さんがとても素敵な雰囲気でお料理を食べながら、色々とお話を続けました。そして、用事のため前に来られなかった方も次々に来て、とても楽しい懇親会でした。いや、チラシに「懇親会」と書いてありましたが、実は大きな家族が年一回大きいパーテイーで集まり色々と話したり笑ったりするような感じでした。

2016農未来塾

本当に楽しくて、私が日本に来て懐かしくなった唯一のフランス文化を思い出した素敵な時間でした。なぜフランスの文化を思い出したのかははっきり言えませんが、その時の人間関係、気楽で嘘のない話し合い、楽しさ、心地良さ・・・やはり、有機農業の世界は素晴らしいです。もし全て人間関係も同じであれば、今の社会がきっと良くなるでしょう。仮面を落とし相手と気楽に付き合い、話し合い、意見を交換し、そして今の時間を楽しみながら一緒により良い未来を作る。そういった関係です。フランス語ではConvivialismeと言います。一緒にご飯を食べて時間を楽しむという意味がありながら、「共生」と「友愛」の意味も入っている素敵な言葉です。有機的人間関係とは、まさにConvivialisme ですね 。

*ルロン・石原 ペネロープさん(ペネちゃん) フランスで日本の有機農業の産消提携(産地と消費者の提携)について専門に勉強しています。日本に留学して藤沢に住むというご縁で、相原農場に縁農に通っています。